雛祭り、手まり寿司との邂逅

ふらりと立ち寄ったスーパーの鮮魚コーナーで、視界の端に何やら可愛らしい色合いのものが映ったので、近づいてみると、ひな祭り仕様の可愛らしい手まり寿司でした。

丸っこくてちまっとした酢飯の玉に、錦玉子だの、サーモンだの、マグロだのといった、パステルカラーの美味しいものたちが、これまたちんまりと、慎ましく乗っかっているのが、パックの中にぎゅうぎゅうと、文字通りすし詰めになっているのを見て、もう、たまらない気持ちになりました。

こんなにも可愛らしいものどもが、消費者の手に渡るのを、大人しく待っている。なんていじらしいのだろう。今すぐ口の中に全部放り込んで咀嚼したい。ふかふかのクッションを敷き詰めたガラスの箱の中で、未来永劫可愛がっていたい。逆方向の思いがが同じくらいの強さで在る。心がちぎれそう。

概ねこのようなことを思いながら、しばらく手まり寿司に目を奪われていました。感極まって、脚や指先が少し震えていたと思います。

手まり寿司を見た瞬間は、「何としてでもこいつらを買って持って帰りたい」という衝動に駆られました。しかし、手まり寿司可愛さのあまり、常温で何時間もいじくり回した挙げ句、暖房と手の熱で腐らせてしまう自分が容易に想像できたので、奥歯を食いしばって購買意欲を堪えました。食べ物は食べ物としての使命を全うさせてあげられる人の手に渡るべきです。


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手まり寿司への行き過ぎた執着と熱情を発散するために描きました。

パステルカラーでひな祭りをイメージしています。

3月3日のひな祭りは、うさぎの日でもあるらしいので、うさぎ仕様にもしています。

叶うのであれば、いつか、子ウサギのようにぷるぷると震える手まり寿司を飼いたいです。手まり寿司に餌をやったり、手まり寿司の背中に軽く歯を立てて愛でることができたら、きっと幸せだと思います。